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創作シリーズ、第3弾。 制作時間、1時間半。 はたして、需要はあるのか? それは誰にも、わからない。 それでは、どんぞ。 ”鳥” 作:ラモン河谷 ある森に、大きな屋敷があり、ここに一人の少年がいました。 少年は、体が弱く、屋敷から出ることができませんでした。 一日中、窓から、森の様子を眺めていました。 ある日、少年の部屋の中に、美しい小鳥が飛んできました。 その鳥の羽根は、七色に輝き、空を飛ぶ様は、まるで虹のようでした。 少年は、その美しい小鳥に、すっかり魅了されてしまいました。 そして。 二人は友達になりました。 少年は優しく、暖かかったので、小鳥も少年のことを好きになりました。 それから、少年は、小鳥がやってくることが、とても楽しみになりました。 小鳥は、毎日、少年の部屋に飛んできました。 少年は、小鳥をいつも待ち続け、小鳥が去っていくときは、もう来ないのではないかと、ひどく不安になりました。 小鳥は、渡り鳥です。 もうじき、南の島へ去っていってしまうのです。 少年は、ずっと小鳥と一緒にいたいと思うようになりました。 そして。 ある日、少年は、近づいた小鳥を抱きしめ、カゴの中に閉じ込めてしまいました。 「お願いです、私を放してください」 小鳥は、少年にいいました。 「ずっと、僕と一緒にいてよ。君のことが、好きなんだ」 「私も、あなたのことが好きです。だから、南の島へ行く日まで、毎日会いに来ますから」 「いやだ。僕はずっと、君と一緒にいたいんだ」 「・・・・・・」 少年は、最後まで聞き入れませんでした。 少年は、小鳥を愛していて、ずっと一緒にいたかったのです。 そして。 小鳥はカゴの中で生活するようになりました。 小鳥は、自分を閉じ込めた少年を憎むことは、できませんでした。 少年のことは、とても好きだったからです。 小鳥は、毎日、少年の話し相手になってあげました。 少年との会話は、楽しいことでした。 でも、小鳥は、時々、外の景色を見て、ため息をつくことがありました。 少年は、自分がしていることは、小鳥を不幸にしているかもしれない、と、思いました。 それでも 少年は、小鳥を愛していて、ずっと一緒にいたかったのです。 ある夜。 ベッドのなかで眠っていた少年は、物音で目が覚めました。 別の小鳥たちが、窓から少年の部屋に入ってきたのです。 少年が、寝たふりをしていると、小鳥たちは、外から鳥カゴの入り口を開けて、中の小鳥に言いました。 「助けに来たよ。さあ、南の島へ飛び立とう」 小鳥は、少し考えていいました。 「・・・私。行けない」 「どうして?」 「あの子が、悲しむから」 小鳥は、少年が背中を向けて寝ている、ベッドをみて言いました。 「そんなの、彼のワガママじゃないか。自由に空を飛びたくないのかい?」 「飛びたい、飛びたいけど・・・でも、いいの」 結局、小鳥は、カゴの外へは、行きませんでした。 少年は、ベッドの中で、シーツをぎゅっと、握り締めました。 翌朝。 少年は、小鳥を両手で包むと、カゴの外に出しました。 そして、窓際に、小鳥を、ゆっくりと置きました。 少年は小鳥に向かって、すこし寂しげに、笑っていいました。 「今まで、ごめんね」 小鳥は、少年を見上げて、いいました。 「いいの?寂しくないの?」 「うん・・・。でも、僕が本当に好きなのは、空を自由に楽しく飛んでいる君なんだ。 だから・・・いいんだ」 それを聞いて、小鳥は羽ばたき、しばらく飛んだあと、少年の肩にとまりました。 そして、少年にいいました。 「ありがとう。そして、さようなら」
小鳥は、森の彼方へ、飛び去っていきました。